こんにちは、マサヒロです。
2016年からシンガポールで働いています。
前回の宇宙よりも遠い場所に引き続き、帰省(と台湾旅行)前後のフライト中に鑑賞したシンガポール関連の映像作品の紹介です。
アンソニー・チェン監督の「イロイロ ぬくもりの記憶 」です。
- シンガポール人の生活について知りたい
- 多民族国家であるシンガポールの様子について知りたい
- シンガポールに多くいるメイドのことを知りたい
といった方に特にオススメの映画です。
イロイロってどんな映画
シンガポールの中流家庭、共働き夫婦と一人息子ジャールーのもとに、フィリピンから出稼ぎとしてメイドのテレサがやってきます。
元々学校でもよくトラブルを起こすやんちゃなジャールーは突然の部外者である彼女を始めは拒絶(というかイジメ)しますが、仕送りのため必死に働き、ジャールーとも真剣に向き合い心配するテレサに徐々に心を開いていく、という展開です。
終盤では、散々テリー(※作中ではテレサはこう呼ばれています)を困らせていたジャールーが、彼女のことを悪く言う同級生に罰則もかえりみず殴りかかったり、経済的な事情からテリーが帰国せざるを得なくなった時に、何とかそれを阻止しようと必死にお金を稼ごうと駆けずり回る姿は、鑑賞していて目頭が熱くなります。
監督の実体験に基づいているとのことで、シンガポールの様子がよく分かる作品としてここでは紹介していますが、どうやら本作をきっかけにテリーとも再会することができたようで、純粋にヒューマンドラマとしても優れた作品だと感じました。
シンガポール人の生活の様子がよく分かる
この映画自体は割と古いのですが、シンガポール在住者の目から見ても、当地の生活の様子を下記のようによく表しています。
HDB
シンガポールは小さな国です。その国土は東京23区よりも狭く、住宅不足は建国当初からの重大問題でした。その解決策としてHDBという公営住宅が大量に建造され、現在でもシンガポール人の8割がこのHDBに居住しています。
シンガポールを訪れたことのない方や、旅行で短期滞在されただけの方は、マリーナエリアやセントーサ島のイメージが強いかもしれませんが、観光地を少し外れると、山脈のように連なるHDBとその周辺空間こそが当地の本当の生活の場なのだということがすぐに分かります。
僕も以前一ヶ月ほど住んでいました↓
このHDB、十分に快適な上に資産としての価値上昇も見込めるため、シンガポール人の人生設計の大きな要素の一つとなっています。
シンガポールの公的年金であるCPFの用途の一つでもあります↓
この「イロイロ」の中で、ジャールー達が暮らすのもこのHDB。ほとんどのシンガポール人が済む住宅の様子がどんな感じなのか知るにはうってつけの映画です。
共働き
一部の富裕層を除き、経済的な事情からシンガポールの大部分の夫婦は共働きです。
そのため、シンガポールでのメイドの雇用は贅沢でも何でもなく、自分達でより積極的に子育てに関わりたいと願いつつも家計や子供の学費のために共働きせざるを得ないシンガポール人夫婦のリアルな現実です。
実際、シンガポールの全世帯の内5世帯に1世帯がメイドを雇用しています(但し、これには育児だけでなく介護等の理由も含まれます)。
英語と中国語
多民族国家であるシンガポールには4つの公用語がありますが、公共の場や教育機関で用いられるのは専ら英語です。
国民の内約7割が中華系で日常的にマンダリンも話していますが、同僚の中華系シンガポール人に聞くと口を揃えて「英語が一番楽」と答えます。
ちなみにその英語もまた特徴的なのですが...↓
映画の中でジャールー達はマンダリン(中国語)を中心に話す場面が多いですが、テレサとの会話には英語を用い、学校の授業の場面でも英語が用いられています。
多民族国家シンガポールの言語事情を垣間見るにも良い映画だと思います。
鞭打ちの刑
時々ニュースで国際的に批判されていますが、シンガポールの刑罰には「鞭打ちの刑」があります。
実際に執行される場を目にしたことはなかったのですが、この映画の中で、ジャールーが暴力行為の罰として学校でこの罰則を受けます(しかも他の生徒の前での公開刑)。まあ、学校での罰と刑法上の罰は厳密には色々異なるのでしょうが、日本では決して見ることのない罰則なので「本当にやるんだなー。。」と、当地の特殊な一面も垣間見ることができます。。
シンガポールでのメイド(家政婦)事情
上述しましたが、シンガポールではメイドの雇用はごく一般的なことです。
両親共働きが必須であるため子育ての補助として必要な他、高齢化に伴い介護の需要も年々増加しています。メイド側がシンガポールまで働きに来るのは無論、お金が目的です。フィリピン人とインドネシア人(※女性限定)の場合、月550 SGD(約4万4千円)以上の手取り(+衣食住医療費が雇用者負担)であり、両国間の経済水準の差を考慮すると魅力的な金額であることがわかります。
より詳しくシンガポールのメイドの雇用事情を知りたい方には↑のうにうにさんのブロク記事がおすすめです。
また映画の中でテレサも訪れた(不法に副業をしていた)ラッキープラザは以前の記事↓で紹介したようにフィリピン人が数多く集まり、フィリピンの人気ファーストフード店であるジョリビーもある場所です。
まとめ
- アンソニー・チェン監督の「イロイロ ぬくもりの記憶 」はシンガポール人の生活環境や言語環境、労働環境等を知るのにとても優れた作品で、ヒューマンドラマとしても秀逸。
- シンガポールではメイドはごく一般的でフィリピン人やインドネシア人を5世帯に1世帯が雇用している。
関連記事
Let's Enjoy Better Life !